ゴスペルの歴史を知る・歌いたい曲のルーツを学ぶ

こんにちは 東京新宿・大人のためのボイトレ教室Harmoniaのフェルナンデス由布子(@fernandesyuko)です。

「ゴスペルシンガーのフェルナンデスさん」
とご紹介いただくことがよくありますが
実はとても恐縮してしまいます。

ゴスペルのお仕事を中心にしていたのは
かなり昔で20代のころ、
というのもありますが、
なにより、ゴスペルというのは宗教音楽。

私はクリスチャンではありませんし、
ゴスペルを歌う機会もだいぶ減っています。
ゴスペルシンガーといわれると、
ちょっと申し訳ないような気持ちになります。

ただ、「ゴスペル」というのがそれほど
市民権を得た言葉になっているのだ、
ということがよくわかります。

ゴスペル歌手、というと
どんな歌を歌って、
どんな声をしているのかが、
だいたい想像できませんか?

ものすごい認知度です。

ただ、日本の多くの方がその成り立ちや
歴史的背景をざっくりとしか知りません。

あなたがもしゴスペルを歌っているなら
宗教音楽であることや
奴隷制度の中で生まれたこと
などは、きっとご存知でしょう。

今回もう少しだけ掘り下げてみようと思います。

ノンクリスチャンの私ですが、
かつてはかなりゴスペル等の
アフリカルーツの研究をしていました。
今回また色々調べていくうちに
新たに学んだこと、知ったこともあります。

本当に奥が深くて
とてもじゃないですが全てを伝えらられません。

でも、いくつか大事だと思うことをシェアさせてくださいね。

歌のルーツを探ることは
歌い手として非常に重要な視点です。

ゴスペルに限らず、歌を歌う時は
その曲の音楽としての
構成要素を分析するだけでなく

歌詞はもちろんのこと、
曲の成り立ちやその時代的背景を知り
考察すること、想像することが歌の味をつくりますから。

ゴスペルの歴史はアメリカ黒人の歴史でもある

アメリカの黒人教会から
現在の形のゴスペルが生まれました。

その大元はアフリカ。
15世紀から19世紀頭までの
おおよそ400年もの間、
アフリカから黒人たちが奴隷として
南北アメリカ大陸に連れてこられました。

奴隷として連行されたアフリカ人は
独自の言語・宗教などを剥奪され
苦しい毎日を過ごしていたのは歴史で習うこと。

また、反乱が起きることを恐れて
集団で集まることも当初は禁止されてていたようです。

労働の歌

現在ある黒人の歌の中で最も古くて
多くのルーツとなっているのが、
奴隷時代の労働の時の歌といわれています。

仕事が捗るので作業の時歌うことは
許してもらえてたようです。

楽しいものもあれば、
酷くて悲惨な人生を嘆くものも。

その中にはハンマーソングとよばれるものもあったとか。

ハンマーを上げ下げするような
重労働の時に歌われるもの。
その時に合図や掛け声の代わりで歌われる曲。
(日本の民謡などとかぶりますね。)

奴隷制度が終わった後も
厳しい状況は変わりません。

危険な場所での仕事も多かったようで、
鉱山や鉄道工事などの厳しい現場や、
また、不当な逮捕も多く、囚われた刑務所でも歌い続けられたそうです。

 

こちらはテキサスの囚人刑務所で
歌われたハンマーソングのよう。
文献と照らし合わせると
1859年ではないかと想定します。
注:奴隷解放宣言は1863年なので、奴隷制度下でさらに刑務所にいれられていたのか・・ここの詳細はちょっと不明です。

 

アフリカルーツにするものの特色の一つ
コールアンドレスポンス風の曲。

現代のゴスペルもまさにそうですね。

奴隷時代から隠れて夜中に行う集会では、
皆が輪になって呼びかけ合う、
コールアンドレスポンスのスタイルで
歌や踊りが繰り広げられていた、
という記事もありました。

ちなみに現在私がハマる
アフロブラジルの宗教音楽やカポエイラも
コールアンドレスポンスにあふれています。

アフリカのコミュニケーションスタイルなのでしょうね。

南北戦争時代の歌

私たちにとても馴染みのある曲が
意外にもゴスペルソングとして歌われています。

私のコーラスユニットでも
イベントなどで時々歌いますが、
テレビCMでも流れるので
おおくの日本人が知っているでしょう。

リパブリック賛歌。
ヨドバ◯カメラのCMや、
ごんべさんのあかちゃんが、、
でも有名ですよね。

この曲はアメリカの南北戦争時代(1861〜1865)に、
奴隷を解放しようという北軍の応援歌として歌われていた軍歌が元になった曲です。

少しずつ形を変えてゴスペルとしても
歌われるようになったのでしょうね。

ちなみに、私がすごーくすきなバージョンは
20年近く前のCDからですが、
ニューオーリンズの歌手、のこちら。

私が歌う時もこのバージョンをやらせてもらっています。

最初のゴスペルクワイヤー?

南北戦争時代からそうだったようですが
白人の中でも黒人を支援したり
活躍をサポートしてくれた人がいるそうです。

南北戦争後に建てられたテネシー州ナシュビルの黒人大学フィクス大学。

やはり貧しい家庭の子供が多く
大学も財政危機に陥ったそうですが、
ここの白人音楽監督が生徒を集めて音楽グループを結成。

これがフィクスジュビリーシンガーズ。
資金集めのために全国に巡業をしていったそうです。

黒人霊歌を西洋式にアレンジして
知名度をあげていったようですが、
今も続く伝統的なグループ、
YouTubeなどで聞くとキレイめなゴスペルでした。

よかったらググってみてください。

Amazing Graceはゴスペルではない?

日本でゴスペルソングといえば、
Amazing Grace
と答える人はきっと少なくないでしょう。

実際私もゴスペルを歌うお仕事で
何度も歌ったことがあります。

ただ、厳密にいうと
アメリカ黒人教会で生まれた賛美の歌、
という視点で考えると、
これはゴスペルとは言えないようです。

もともとは奴隷貿易商だった
ジョン・ニュートンというイギリス人が、
自分の海での遭難や病気などを経て作った曲の一つだそう。

イギリス民謡のこの曲がアメリカ大陸に渡り
マヘリア・ジャクソンなどのゴスペル歌手に歌われ広まっていきました。

名曲というのは土地や世代をぐんと飛び越えて歌い継がれていくんですね。

本から学ぶ黒人やゴスペルの歴史

私は大学の専攻が社会学部で
当時から黒人音楽や文化に興味があり
卒業論文でもとりくみました。

当時に比べたら今は格段に得られる
情報の歩幅が広がりました。
文字情報のみならず、写真に動画。

また、知りたい情報は
その瞬間即座にアクセスできます。

ただ、引用元はしっかり確認せねばで
情報の質を考えるとやっぱり本から
得られるものが大きいなと感じています。

今回かなり参考にさせてもらったのはこちらの本。

奴隷時代から歌い継がれてきた
黒人たちの音楽について詳しくかかれています。

また、この方の他の文献も参考になりました。
どちらもかなりマニアックですが
興味ある方は是非に。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/18-2/RitsIILCS_18.2pp.173-185Wells.pdf

 

これらによって推察されるのは、
よく黒人霊歌が発展してゴスペルになった
といういわれ方をしますが、
黒人霊歌の伝統を汲むものもあるけれど
決してそこから発展していった、というわけではないようですね。

宗教的なものが黒人霊歌としてあつかわれ、
世俗的なものはブルースに、
となっていったようです。

ゴスペルソングというものは
神を賛美する、という内容で
最初から作られていったということかと思います。

歴史の流れというものは本当に興味深いものです。

現代のゴスペル・コンテンポラリー

今まであげたような曲や
その流れを汲む曲は
非常にトラディショナルなゴスペルソング。

でも今あなたがクワイヤーに所属してるなら
こういう曲よりもっとコンテンポラリーな
ゴスペルソングを歌っているかもしれません。

だってやっぱり日本ではこれが流行りましたものね。

天使にラブソングを

この映画でゴスペルを知った人もいるでしょう。

この映画の中で使われている曲は
非常に伝統的なものが多いと思うのですが
アレンジが超現代的ですよね。

あの曲がこんなふうに?となった人も多かったのではないかな。

やっぱりカークフランクリン?

今年度のグラミー賞ゴスペル部門も彼。
今まで何度も受賞しているし、
来日もかなりしているのでご存知の方も多いでしょう。

ラップ等他のジャンルとのコラボがあったり
ソウルの名曲をゴスペルアレンジしていたり
親しみやすい要素がたっぷり。

私も何度かビルボード東京に観に行きました。

ビルウィザーズの名曲をゴスペルに。

イズラエル・ホートン 

白人の母と黒人の父との間に生まれたことで
思う悩んだこともあったとか。

それを昇華させて素晴らしい曲を生み出してきたのかもしれません。

昨年の教室イベントのゴスペルワークショップでもやった曲です。

ヨランダ・アダムス

クワイヤーを率いてるというより、
ソロゴスペルボーカル というイメージでしょうか。

彼女の歌は本当に素晴らしくて
何を聴いても感嘆しかありません。

このデュエットもすてき。
ドニー・マクラーキンもポップなゴスペルを提供してくれています。

トラディショナルであれ、
コンテンポラリーであれ、
ゴスペルというのは神を賛美する曲。

これが他のジャンルと決定的に違うところ。

日本人がゴスペルを歌うのは

歌詞が英語ゆえ、日本人には若干
実感しづらいかもしれませんが、
ゴスペルは宗教や信仰の言葉で構成された曲です。

日本語訳するとかなりずしっとこれらの言葉が届きます。

それを改めてみると
ノンクリスチャンの私が歌っていいのか
と思ったこと、何度もあります。

そんな時、 20年近く前に
サンフランシスコのダウンタウンの教会に
地元の黒人の友人に連れて行ってもらった時の牧師さんの言葉を思い出すんです。

日本でゴスペルが流行ってるのは嬉しい。
宗教も乗り越えて、聴いてもらえて歌ってくれてありがとう。

と。

もちろんいろんな思いが
交錯しないわけはないでしょうが、
一つの音楽として他国でも認識されたことを
喜んでおられるような印象でした。

敬意を持って、愛を持って歌おう、と心に誓った次第です。

日本では今ゴスペルクワイヤーや
ゴスペルと名のついたイベントがたくさんあります。

それらクワイヤーがやる曲全てが
ゴスペルと言うわけではありません。
つまり、「神を賛美する曲」と言うわけではありません。

流行りの洋楽やディズニーソング、
また日本の合唱をブラックミュージック風に
アレンジしたものがたくさんあります。

個人的には、一つの音楽ジャンルとして日本で浸透しているので
それはそれで素晴らしいことではないかと思います。

「「ゴスペル」と「全編でハーモニーが施されたブラックミュージック風アレンジの曲」をやっています!』
と言うよりわかりやすいですしね。

一方、このような歌はゴスペルと言う言葉ではなく違う言葉を使おう、
といった動きもあり、こちらの視点も大事だなあ、と思います。

いかなる立場にあるにせよ、
神様の歌を歌う、
ゴスペルを歌うと言うからには、
やはりその歴史を知り、
先人たちに敬意を尽くし
心を込めて歌うのは礼儀だと思うから。

このことはただの学びではありません。
歌に彩りを与えてくれるはずです。

ぜひ、自分の歌う歌の歴史や成り立ちに触れてみてくださいね。

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