こんにちは 大人のボイトレ、フェルナンデスユウコです。
声の響きや声量が素晴らしい、また歌がうまい外国人をみれば、ついつい私たちは人種やDNAによる体型や骨格の違いから物語をスタートさせてしまいがちです。
でもそれは自分を諦める物語です。本当はそんなの最初から書きたくないですよね。
でも同時に、アフリカ系の人たちのホールいっぱいに響く声や、ラテン系の歌手の巧みに揺れるグルーヴを耳にしたら
「血だよねええ」と言いたくなる・・・のもわかります。
歌う時は私たち自身が楽器になります。楽器そのものが持つ特性があるように、体格や骨格のつくりや大きさももちろん影響はあります。
これは「血」と言える部分かもしれません。
が、それより大きいのは、また「血」をも凌駕するのは「環境」です。
日常使われている言語や、よく耳にする音楽や触れ合う人々の情緒、感性といったものがより歌声に関わってきます。
歌が上達するヒントの一つがそこにもあるように思います。
同じアジア人の韓国人はなぜ歌が上手い?
骨格や体型に似ている部分があるお隣韓国のひとたち、歌が上手い人が多いですよね。
もちろん個人差はあるものの、BTS、BLACKPINKなどは国内やアジアにとどまらない凄まじい人気ですし、他にもルックスが良いだけではなく歌も踊りも素晴らしいグループが多くある。
また、韓国ドラマでは時々俳優さんが歌う場面があるのですが、ドキッとするほど声が良かったり上手だったりします。(わたくし、もと韓流ファン)
声の響きは良いし、ビート感にも長けてて非常に歌のレベルが高いです。
そこで思い出すのが我がコーラスユニットSound Of Spiritの不動のセンター、KAJIK。彼女は在日韓国人。彼女にヒントを聞いてみようと思いました。
SOSのライブに来たことある人はご存知でしょうが、KAJIKは深い響きのある声を持っていて、
そして英語はほぼ話せないけど、なぜか発音もよくリズムの刻みも良い。
昔は「やっぱり血かな~~」なんて思ったこともありましたが、ボイトレを指導する立場になり、色々研究して理解を深めると、やはり「環境」の影響は大きいです。特に「言語」。
以下、KAJIKに確認し発音してもらったりして考察してみました。
SOSの情報はこちらから
歌の上達に関わる発音の特徴
まず、ハングルの日本語との大きな違いは、子音と母音の数です。
子音19個、母音はなんと21個もあるそう。
日本語は、子音は数え方によるけど16個ほど。母音は5つ、ですね。
ちなみに英語も母音は20数個と言われてますね。
韓国語は他にも日本語とは異なる様々な特徴があるようです。
KAJIKに細かく聞いてみました。
その中で大きな特徴としてわかったのは
*喉をグッと閉めて出す音がある
*喉を下げて出す音がある
*子音はくっきり発音する
ボイトレ的に見る韓国語の発声
喉をぐっと閉めて声をだす
喉をグッと閉めるように使う音、と聞くと喉を無理して締めてしまう悪い発声のように聞こえますが、そうではなく、しっかりと声帯を閉じ、息漏れの無い、声帯を厚く使った音を出せるということです。
KAJIKは芯のあるエッジが効いた響く声が非常に特徴的。
声帯をきちんと閉じてなければでてこない声です。
息漏れした声、スカスカした声密度の粗い声の人は喉の閉鎖が足りません。
しっかり声帯が閉じる感覚をつかむトレーニングが必要です。
(ポリープなど病理的な原因がある場合もあるので注意。)
「喉を閉じるってイマイチわからない、、」
そんな方は、喉に手の平当てて、口を開けて息を吸ったら、一度息を止めてみて下さい。
わかりにくければ少し勢いよく息を吸ってキュッと止めてみる。
(負担もかかるので何度もやらないこと)
そうすると、何かがキュッと閉じる感覚を得られると思います。
これが喉の閉鎖です。地声でしっかり歌うときはこの感覚がマストでもあります。
喉を下げて声をだす
喉を下げる感覚とは、喉の奥を深く落とし、咽頭共鳴腔を広げること。
そうすると深い響きがでてきます。
一般的なボイトレで「喉が開きましょう」と言われることもあるかもしれません。
ただ、「喉を開きましょう」という説明だと、喉の共鳴腔ではなく、声帯を開こうとするのか、声帯の閉じ方が弱くなる人がいるので私は使いませんが、こちらのがピンとくる方は「喉が開く」感覚を意識してください。
あくびした時の喉の開きが近い、とも言われます。
でもここで注意すべきは、喉の奥を開いたときに、同時に口角が下がってしまわないようにすること。
音色やピッチが暗くなりますので。
また、喉を下げる感覚は、舌に力を入れて口腔内を開く(風に見せかける)ことでありません。
これも注意が必要です。
ゴスペルをされてる方などに多いですが、太い声を出したくて、舌や軟口蓋に力を入れてしまい、太い声(風)に聞かせようとする方が少なからずいます。
これは太いように聞こてそうで、じつはただのこもり声。
そしてハリはでてこないし、力みがあるため高音は出せません。
そうではなく共鳴腔をしっかり開くことです。
深い響きをコントロールできるようになりますのでトライしてみて下さい。
子音をくっきり発音する
これは見逃されがちですが、子音はビートやリズムを作るのに非常に大切になってきます。
子音をくっきり発音することで、当てたい音を瞬間的に捉えられるようになり、リズムやビート感がより際立ってシャキッと聞こえます。
くっきりというのは「大きく出す」のではありません。子音は濁音以外は無声音で音は流れていかない。
「k」とか「t」とかに母音をつけないで舌の圧力を高めにして長めに出すイメージです。
KAJIKのビートが立った、ノリの良い歌い方もこれと関係してそうです。
いつも日本語歌ってるからといって関係ないことはありません。
日本語でも何を歌ってるかわからない人は非常に多い。滑舌を疎かにしてるようでしたら、一度くっきりしっかり発声してみてください。
その時、息の勢いは強くしないように注意です。
日本語は母音が優位な言語なこともあり子音が苦手な人が多いです。
滑舌が悪いとか、リズムがくっきりしないなどの悩みがあればもしかしたら子音が弱いのかもしれません。
まとめ
韓国人が歌がうまい秘密。
あの色とりどりの韓国ドラマたちに表れているように、感情を外に出していくのが上手なのもあるかもしれません。
これは国民性と言ってしまえば簡単ですが、いくら感情豊かとは言え、それを歌に表現できる術を持っていないとああいうドラマティックな歌声には仕上がりません。
「言語」というその国独自のツールの影響は本当に大きいです。
これらは完全な私の独断と偏見による見解ですが、むしろそこから真似できることが、たくさんある気がしませんか?
容姿が比較的近いアジア人の国、韓国の言語を例にとりましたが、これはどんなことにもきっと言えること。
言い訳にするのはなんでも簡単です。
違いを知りそこから何を掴み取るか!その視点が自分自身と自分の歌を成長させる秘訣にもなる、そう思います。